【バスケ】シュート率を上げる方法はある?練習方法は?どこをねらう?

「リングのどこを狙えば確率よく入るんだろう??」

バスケットをしている方なら誰でも考えた事があるのではないでしょうか?

筆者は子供の頃にスラムダンクを見て考えました。

初めてのフリースローに臨む主人公、桜木花道に対して、周りが好き勝手にアドバイスをします。

宮城:「花道!リングの手前のふちを狙うんだ!」

三井:「いやリングのだ奥!奥をずっと見ながらうつんだ」

流川:「目つぶって投げれば」

アドバイスが三者三様。バラバラです。

筆者は子供ながら

(「シュートが1番上手なのは三井なんだから三井の言っているのが正しいのでは!?」

と思い奥を狙うようにしていた記憶があります。)

現代科学では、「シュート時の目線のポイント」が明らかになってきています。

流川のアドバイスを「一箇所に注視しない」とも解釈を広げたとして、皆さんは

・リングの手前

・リングの真ん中

・リングの奥

・リングとは別な部分

・一箇所に注視しない

・見ない

どれが一番確率が上がると考えていますか??

現代科学の答えでは、上記3つが正解。下記3つが不正解だとされています。

ポイントは「どこ」を見るか?よりも「どのように見るか?」が大切

以下で詳しい内容を説明していきます。

目次

確率を上げるためには”1点を集中して長く見る”

結論から述べると、「どのように見るか?」の具体的な答えは

1点を集中して長く見る“ことです。

つまり、流川のアドバイスのように「見ない」は確率が落ちる要因になります。

宮城の言うように手前でも、三井の言う奥でも良いという事になります。

しかし、もう一度両者のアドバイスを確認すると、

宮城:「花道!リングの手前のふちを狙うんだ!」

三井:「いやリングの奥だ奥!奥をずっと見ながらうつんだ」

三井は1点を集中してみる以外の大事なポイントである、”長く見る“事も具体的にアドバイスしています。

よって最も正しいアドバイスは三井であったと思われます。

“1点を集中して長く見る”が重要な事を示した研究

上記を調べた研究をご紹介します。

Visual control when aiming at a far target

Abstract

Gaze behavior of elite basketball athletes was determined as they performed 10 accurate and 10 inaccurate free throws (FTs) to a regulation basket wearing an eye tracker that permitted normal accuracy. Experts (mean FT = 78%) differed significantly from near experts (mean FT = 56%) in having a longer fixation on the target combined with an earlier fixation offset during the shooting action. These results, which depart from current models of near aiming, are tentatively explained using a location-suppression hypothesis. During the early phases of the aiming action, a fixation of long duration is needed on a specific target location. As the aiming action is then performed, vision appears to be a liability and is suppressed.

J Exp Psychol Hum Percept Perform 1996 Apr;22(2):342-54. doi: 10.1037//0096-1523.22.2.342.

研究の内容を簡単に説明します。

対象


被験者はカナダの大学でプレーする16人の女子バスケットボール選手。

16人中13人は1989年から1991年のシーズンにカナダの大学選手権で優勝または準優勝した経験をもつレベルの高い選手。

シーズン中のフリースローの確率

高かった8人(平均FT=78%)の被験者はエキスパート(E群)

低かったた8人(平均FT=56%)の被験者はニアエキスパート(NE群)

上記のように分類され、E群とNE群のシュートの際の目線の動きが比較された。

方法

シーズン終了1週間後に集まってもらいフリースローを試投してもらった。

・10本成功するまでのかかった本数

・10本失敗するまでに打った本数

を記録し、シーズン中と同様に、E群がNE群よりも確率よく成功する事を確認。

試投中は、選手の目線をトラッキング出来るカメラ・センサーのついたヘルメット(700g程度)を装着してもらい、選手のシュート前後の目線を確認した。

結果

シーズン中の確率と同様、E群はNE群よりも

10本成功するまでのかかった本数は少なく、10本失敗するまでに打った本数は多かった。

E群はフリースローを打つ前の動作において、リングを注視ている時間がNE群に比べて長かった

※論文のポイントのみ抜粋しています。詳しい内容が気になる方は原文を確認してみて下さい。

一点を注視する視線の動き”Quiet Eye”

上記の研究のポイントは動作の早期から長時間リングを見続ける事でした。

この1点を見続ける視線は”Quiet Eye“(以降QE)と呼ばれています。

具体的には視野角 3 度以下かつ注視持続時間が 100ms(0.1秒)以上の眼球運動と定義されています。

QEがフリースローにおいて重要である事を解説された動画をご紹介します。

※字幕を出すと”静かな目”と訳されているのがQEです。

QEを意識して行うことによりシュート成功率が向上した事が以下の研究でも示されています。

S. K. Harle, and J. N. Vickers: Training Quiet EyeImproves Accuracy in the Basketball Free Throw, The Sport Psychologist, Vol.15, pp.289-305 (2001).

QEのポイント

以下の動画では実際にQEを使用する際のポイントが紹介されています。

動画では”sight focus”と呟いてからシュートを放っています。

リングを注視してから呟く時間をとる事で注視する時間を確保する事に繋がります。

先ほど示した研究を再確認すると、QE時間はE群で約1000ms(1秒)、NE群は約250ms(0.25秒)である事がわかります。

呟く言葉はなんでも良く、とにかくリングを1秒以上注視する事が重要です。

QEにより正確にフィードフォワード機構が働く

QEを1秒以上行う事で、なぜシュート率が上がるのかを検討します。

ポイントは“フィードフォワード機構”です。

フィードフォワードとは、人が動作を行う際に、脳が無意識に必要な筋肉を選択したり、どの程度の力を入れるかを予測し準備するシステムの事です。

フィードフォワードの予測は視覚からの情報が大きな役割を果たします。

具体例を挙げます。

上記の画像のように、硬貨がびっしり入った宝箱を持ち上げる事を想像してみて下さい。

重さにすると50kg程度はあるでしょうか?

成人男性でも持ち上げるのは容易ではありません。

力の入りやすい姿勢をとり、勢いをつけながら持ち上げようとする方が大半でしょう。

しかし、勢いよく持ち上げたにも関わらず、この硬貨がプラスチックのおもちゃで、宝箱が全体で5kg程度しかない箱だったとしたらどんな事が起こるでしょうか?

・軽すぎてびっくりする

・必要以上に早いスピードで持ち上がる

・後によろける、尻もちをつくように転ぶ

などの現象が起きると思います。

50kg持ち上げるために必要な筋肉を80だとすると、5kg持ち上げるためには8の力で十分です。

重たそうな宝箱を見た時に、視覚によって脳が「重たそうだから力をたくさん入れよう」と無意識に筋肉に準備をさせるため、本来8で十分な力を80も入れてしまうため上記のような現象が起きます。

これがフィードフォワード機構です。

QEとフィードフォワードの関係

フリースローの話に戻ります。

シュートを決めるためにもフィードフォワード機構が働きます。

QEにより「視る」事でリングまでの距離を適切に測り、発揮すべき力の程度をフィードフォワードにより準備します。

「視る」時間が少ないと、正確な距離を測る事が出来ず、力の加減を間違える事につながります。

まとめ

フリースローの確率upに必要なこと

・1点を長く、注視する事をQuiet eye(QE)と言う

・フリースローの確率が高い選手は低い選手に比べてQE時間が長い

・QEを意識することにより、フリースロー確率がupする事が研究により示されている

・QEを長く行う事で、フィードフォワード機構が正しく働く

今回、紹介した研究ではいずれもフリースローを対象にした研究でした。

筆者の考えではフリースローに限らず、様々な場面に応用出来るものと考えられます。

技術・体力の向上と併せて実施してみて下さい。

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