足のアーチはなぜ必要?扁平足だとバスケットにどう影響?怪我は?

「うちの子、すごい扁平足なんですけど、治すことって出来るのでしょうか・・・?」

理学療法士として働いていると、このように質問される事が多々あります。

ダッシュ、ジャンプ、ストップ、カッティングなど様々な動作を必要とするバスケットにとって足のアーチは非常に大切です。

上記質もにYes,Noの2択で回答するのは難しいのですが、

大きな要素を占めるのは実は年齢で、小学校の低学年にはすでにアーチが確立します

アーチが確立される年齢は意外に早く、小学校高学年で気になり出した頃には根本的な解決は難しい場合もあります。

根本的な解決が難しい年齢の方にどのような対策をすべきか?

もちろん対策方法はあります。

対策方法以外にも、以下の疑問を解決できるようにまとめました。

この記事を読むとわかること

・アーチがある事でバスケットの能力とどう関係するか?

・扁平足を修正するための筋肉とその鍛え方は?

・修正出来る年齢を過ぎている場合はどのように対策するか?

この記事は10年以上、整形外科で理学療法士として勤務し、たくさんのお子さんの足を診てきた筆者が書きました。

目次

足のアーチとは?

“土踏まず”と呼ばれる部分で、足部の地面から浮いている部分のことです。

上図のように、正常であれば足部の内側は少し地面から浮き、アーチを描きます。

一方、足の内側も全て地面に接している状態を”扁平足”と言います。

アーチがある事で得られるメリット

アーチがあるメリットはいくつあります。

代表的なものを下記にまとめます。

地面を強く蹴れる

足で床を押すと、床から足を押し返してくる力が生まれます。これを”床反力”と言います。

この床反力が発生した時は自然に反対方向へ向かうエネルギーが発生します。

高く飛ぶ・切り返して大きく逆方向に移動するためには大きな反力を得る必要があります。

地面と接しているのは足部だけ。

足部が安定しておらず、ふらふらしていると大きな床反力を得ることは当然出来ません。

アーチがある状態は足部が硬く固定されるため床反力を得るのに有利です。

アーチがある足は

・踏み込んで、高いリバウンドジャンプをする

・素早いクロスオーバーで相手を置き去りにする

・地面をしっかり蹴りしつこいディフェンスが出来る

などにつながります。

また、床反力を得てより大きな力を得るためには、筋肉の伸長反射を利用するとさらに効果が高まります。

以下に詳しく解説した記事もありますので参考にしてみて下さい。

>>筋肉量だけじゃない! 瞬発力のある選手は

衝撃を吸収し体への負担を軽減

アーチのある足は蹴り出しの際に大きな力を生むだけでなく、衝撃を和らげる作用もあります。

上からかかる力がかかった際にアーチがわたむ事で衝撃を前後に逃す作用を「トラス機構」と言います。

トラス機構が働く事によって、ジャンプ→着地の際の衝撃を吸収する事ができるようになり、バスケットに多く発生する以下のような障害発生リスクを低下させます。

・足部疲労骨折(舟状骨、踵骨、第2〜4中足骨など)

・脛骨疲労骨折

・足底腱膜炎

・骨端症(シーバー病など)

ニーイン・トゥーアウトを防ぐ

膝が内側に入る癖は怪我につながりやすいため問題視されます。

膝が内側に入る現象をニーイン・トゥーアウト(knee in toe out)と言います。

ニーイン・トゥーアウトにより起こる代表的な障害・外傷は以下のようなものがあります。

・膝前十字靭帯損傷

・膝内側側副靭帯損傷

・膝半月板損傷

・鷲足炎

・膝蓋骨脱臼

ニーイン・トゥーアウトしてしまう原因は様々ありますが、足部アーチの低下もその1つです。

実際に行ってみるとわかりやすいですが、上図のように足を前後に開いて立ち、意識的に足部アーチを潰すよう内側に体重をかけてみて下さい。

そうすると、足部に連動して膝も内側に入ってきます。

足部アーチは9歳までに確立する!!

足部アーチが確立する年齢は小学校低学年と意外と早い事を記事冒頭でお伝えしました。

以下、詳足部のアーチの形成に関して詳しく記載されている書籍から引用します。

足のアーチは、歩行機能の発達に併せて形成されます。したがって、アーチ形成は伝い歩きが可能となる生後10ヶ月頃から始まります。1歳〜3歳前頃はまだまだアーチは未形成で足は扁平化しているのに対し、3歳を過ぎ、6歳頃までに急速にアーチが形成され、7〜9歳頃でほぼ成人と同じアーチが完成すると言われています。

 アーチ形成が進む年齢には性差があると考えられており、女子は3〜4歳頃、男子は4〜5歳頃で大きいという報告もあります。

永木 和載 足部・足関節のキホンとケア.株式会社秀和システム.p132.2020

上記の理由により3〜9歳頃までが足の成長にとって極めて重要な時期と述べられています。

未就学児の場合(3〜6歳)

未就学児の子供に一生懸命足部のトレーニングを行ってもうまく実施できない事がほとんどだと思います。

そのため、未就学児の子におすすめの対策は

・足にあった機能がしっかりとした靴を選定する

・足部アーチを形成する足趾(足の指)をよく使うように裸足での運動時間を確保する

事が大事だと思います。

小学校低学年(6〜9歳)の場合

アーチ形成が最も盛んな時期は過ぎていますが、この時期であれば、足部の筋肉を意識的使う事で改善する可能性があります。

足部の筋肉は大きく分けて2種類あります。

・脛から足までつながる長い筋肉である”外在筋”

・足部だけに付着する”内在筋”

に分かれます。

・後脛骨筋

・長趾屈筋

・長母趾屈筋

使い方は以下の方法を参考にしてみて下さい。

※今回は縦アーチ(内側のアーチ)を作りたいので膝を曲げてOKです。膝を伸ばすパターンで行うと、後程紹介する内在筋のトレーニングとして有効ですのでどちらも実施する事をお勧めします。

・母趾外転筋

・短趾屈筋

内在筋の使い方は、先ほどのタオルギャザー(膝を伸ばして行う)や、以下の方法を参考に実施してみて下さい。

内在筋をより効率よく働かせるためには、足底にある筋肉をほぐす、受容器(センサーの役割をする)を刺激する事が有効です。

自分の手でマッサージするなどでも有効ですが、より効果の高い道具があります。

↓↓

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このケア用具は近年米国で特許を取得し、2024年から日本でも販売を開始した新しい商品です。

トヨタ自動車アンテロープスの山本選手、安間選手も愛用しているそうです。

刺激を足底に与えるメリットはトップ選手も感じているようです。

刺激を常に与える事を可能にした靴下タイプの面白い商品もあります。

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筆者の10歳の息子はこの靴下を使用しています。

個人的な感想ですが、全く足の指が開けなかった状態が、練習後に使用し始めて1か月で開けるようになりました。

※あくまでも個人の感想です。効果を保証するものではありません。

小学校低学年(6〜9歳)以上の場合

アーチがほぼ完成した9歳以上になると上記のエクササイズでアーチの高さが劇的に変わることは難しいかもしれません。

その場合はインソール(中敷)で対処するのが有効です。

スポーツ店でも足のアーチをサポートするためのインソールが販売されています。

硬さや形状、アーチの高さも商品によって違い様々なものが存在します。

ネットでも購入可能で、足の使い方を熟知した理学療法士が監修している商品は人気が高く評判が良いです。

以下のリンクの商品はいずれも理学療法士による監修がなされている商品です。

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リアライン・インソール・スポーツ トップアスリートのリハビリから生まれたスポーツ用インソール

また、スポーツ分野に特化した整形外科ではインソールを足に合わせた形で作成してもらう事が出来ます。

医療保険の適応として作成する場合が多いため、扁平足により、障害(痛みがある)場合に適応となります。

この場合、どこの病院・クリニックで作成してもらえるか調べる手間があったり、診察を受ける必要があります。

多少時間はかかりますが、場合によっては市販の商品を購入するのとさほど費用が変わらない事も珍しくありません。

市販のもので効果を感じられなかった・痛みが引かない。

などのお悩みの方は是非一度、インソール作成をしてくれる医療機関の受診を検討してみて下さい。

まとめ

アーチがしっかりある足は

・蹴り出す力が強くなり、ジャンプ・切り返し能力が向上する。

・ジャンプなどの衝撃を吸収する能力も高まる

・大きな障害・外傷につながるニーイン・トゥアウトを防ぐ

・アーチは9歳前後に確立するため、9歳以下の方は内在筋・外在筋のトレーニングが有効

・9歳以降の方はアーチをサポートするためのインソールを検討する

以上がポイントでした。

足部の安定性・柔軟性はパフォーマンスアップにも、障害予防にも非常に重要です。

自分、お子さんにあった方法を検討し取り組んでみて下さい。

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