「なんだか最近シュートが全然入らないな・・・」
「ドライブで仕掛けてもすぐ転んでしまう・・」
「以前はなかったのに最近パスミスばかりでボールを持つのが怖い・・・」
バスケットに限らず、スポーツを行っているとこんな悩みを抱える事は誰にでもあるのではないでしょうか?
特に、
・順調にうまくなっていた頃と比べて周りよりも伸び悩んでいる
・同じようにシュートを打ってるはずなのに全然入らなくなった
・以前は出来ていたはずの技術がうまくいかない
などのように、停滞や後退を感じてしまうと選手本人はもちろん、見守っている保護者の方々は心配になるでしょう。
一時的な不調は小学生からプロレベルまでどの年代にも起こりえます。
また、同じ一時的な不調でも原因は様々です。本記事では
①プラトー
②クラムジー
③スランプ
の3つに分けて、それぞれの解説や起こる原因、対処法までご紹介します。
その不調はプラトー?クラムジー?スランプ?
一時的な不調は完全な初心者に起こる事は稀で、競技を始めてすぐは色々な技術が伸びていく傾向にあります。
大人気バスケ漫画・スラムダンクの主人公である桜木花道はバスケットを始めて3ヵ月の短期間に急激な成長をみせました。
桜木はプラトー、クラムジー、スランプいずれの不調もまだ迎えていない時期だと考える事ができ、続編があればもしかしたらこれらに悩まされるかもしれません。(おそらくクラムジーは訪れない??)

上記の画像の折れ線はバスケット選手が成長していく過程を表しています。
御覧の通り、右肩上がり一直線に成長する事はまずありません。
途中でほぼ横ばいになり、上昇していない時期が「プラトー」です。
プラトーを超えて成長した後に一度、落ちいている時期は「クラムジー」です。
選手としてある程度の成熟をした後に、またパフォーマンスが低下するのが「スランプ」です。
以下でさらに詳しく解説していきます。
プラトーとは
英語で「plateau」と書きます。
- 高原、台地
- (グラフの)平坦域
- 上昇も低下もしない比較的変動の少ない時期
などの意味を表す単語です。
競技を始めてすぐの初心者は目に見えて成長する事が多いです。
プラトーとは完全な初心者の時期が過ぎた頃に訪れやすい不調です。
競技の練習やトレーニングによって起こる体力・技術の向上が落ち着き、停滞している時期を指します。
このプラトーの時期は成長の過程で何度も訪れます。
クラムジーとは
英語で「clumsy」と書きます。
- 不器用な
- ぎこちない
- 下手な
という意味があります。
プラトーが停滞だったのに対し、クラムジーはパフォーマンスが低下した状態を指します。
後述するスランプも同様にパフォーマンスが低下した状態ですが、原因が異なります。
クラムジーは成長期の時期に発生します。
スランプとは
英語で「slump」と書きます。
- ドスンと落ちる
- 急に衰える
などの意味があります。
一時的な不調と聞くとこのスランプをまず想像する方が多いのではないでしょうか?
スランプはある程度競技のレベルが上がり、技術が確立した後に起こる不調を指します。
野球でよく聞く、イップス(全くストライクが全く入らなくなるなどの現象)もスランプの一つです。
なぜ不調(プラトー?クラムジー?スランプ?)が訪れるのか?
プラトーが訪れる理由

練習すると今まで出来なかった事が出来るようになります。
これは、身体を構成する筋肉や骨が強くなるからだけではなく、脳や神経も成長に関与します。
今までやったことのない練習は脳・神経が刺激を受けます。
練習に適応しようと脳・神経が活発に働く事で様々な技術が急激に発達します。
しかし、練習に慣れてある程度の技術を習得すると受ける刺激の量が低下します。
また、同じ練習の繰り返しにより身体への負荷は一局に集中するなど、疲労の蓄積などもプラトーの原因になります。
クラムジーが訪れる理由
クラムジーは成長期に起こるパフォーマンス低下で、身長の伸びや筋肉・骨格の急激な変化により運動の感覚にズレが生じる事で起こるパフォーマンスの低下です。
クラムジーが起こりやすい時期は男女差があり、女子では10歳頃、男子は13歳頃と言われております。
この年代は二次成長期、思春期を迎える時期であり、急激に身体も大きくなり、心も変化しやすい時期です。
大きな身体を動かすには当然、筋力がより必要になります。
身体は急激に大きくなりますが、筋肉はそう簡単に大きく、強くはなりません。
手足が長くなれば、シュートの感覚にもずれが出ます。

レイアップシュートを例に例えると
背が低いため投げるようにシュートしていた選手が、腕が長くなっても同じ感覚でシュートしてしまうとリングをオーバーし失敗してしまうでしょう。
このように今まで出来た動きが相対的な筋力不足や運動感覚のずれによりうまく行かなくなる不調がクラムジーです。
スランプが訪れる理由

スランプはある程度の技術を習得した中級者以上に起こりますが、NBAのトップ選手にも起こる現象です。
・チーム内での立ち位置が向上し試合での役割が増える
・周りから過度に期待される
・成績次第で進路に影響が出る状況にたたされる
・試合での失敗がトラウマになる
など、精神的なプレッシャーが起因となり、リラックスできない状態から陥りやすい不調です。
精神的な不調以外にも、怪我による体調、感覚の変化。新技術取得のためにフォームを変える
なども原因になりえると言われています。
それぞれの不調への対処法と親のNG行動
全ての不調に対する共通の対処法は
①とにかく焦らない事
②体調、コンディションをしっかり整えること
の2点です。
不調時は身体がリラックスできずに、パフォーマンス発揮出来ていない状態です。
必ず不調期は脱出できる事を念頭におき、こつこつとすべき事を続ける事が重要です。
体調、身体のコンディションはパフォーマンスに直結します。
身体に痛みがあると、当然うまく動けません。
疲労が蓄積している状態が長く続く事は不調が改善しない原因になります。
練習中は技術練習、体力向上のトレーニングにあてられ、コンディショニングやリカバリーの時間を確保できないチームがほとんどではないでしょうか?
疲労をためないケアのポイントは以下のようにたくさんあります。
- 筋肉の柔軟性を高めるストレッチ
- 筋膜をリリースする
- 受容器を刺激する
- 皮下組織の癒着を改善する
- 血流を改善する、組織を修復する
- 副交感神経を優位にする
自分の身体に必要なケアを実施できる選手は不調の時期を早く脱出できるかもしれません。
下のリンクから詳しく確認する事が出来、かつ、プロが使用するおすすめのケア道具も紹介しています。
↓↓

>>【バスケ】プロもおすすめ 疲労回復を促進するケア用品まとめ
以降はそれぞれの不調に対しての対処法をご紹介します。
プラトーの対処法
プラトーの原因は練習に対して脳や神経が慣れ、刺激が不足することでした。
そのため、有効な対処法は慣れてない刺激を与えることになります。
youtubeなどで少し難しいと感じるスキルの習得に取り組んだり、バスケットから少し離れて他競技を一緒に取り組んであげるのも有効かもしれません。
慣れない刺激がリフレッシュになったり、新たな発見につながる可能性があります。
クラムジーの対処法
クラムジーの原因は成長による感覚のずれでした。
そのためクラムジーの乗り越え方は、プラトーと真逆になります。
新しい事を始めるよりも、今まで上手くいっていたスキルや基礎を反復する事が有効であると考えます。
繰り返し反復する事で身体の感覚が少しづつ戻ってきます。
スランプの対処法
痛み・疲労から発生するスランプは上述したように身体のコンディショニングを整えることが有効です。
難しい問題は精神的な原因。
大事なポイントは1人で悩まないこと。
1人で問題に向き合うとどうしてもネガティブな事をイメージしてしまいがち。
信頼できる人に話を聞いてもらったりアドバイスを求めると精神的に落ち着きやすいです。
また、「2兎追うものは1兎も得ず」ということわざがあるように、スランプに陥っている時期に全てを良くしょうと考える事は危険です。
「入らなくても良いからシュートが横にずれないようにだけ気をつけよう」
「シュートは入らないけど、ディフェンスは絶対だれにも負けないから大丈夫。」
「シュートが入らないのは仕方ないから、とにかく声を出そう」
など、集中するポイントをしぼる、自分の強みを思い出し自信をもつ、うまく行かないことは割り切って諦める事も時に有効な手段になります。
以降の具体的なエピソードでもご紹介しますが、バスケットのスランプで問題になるのはほとんどがシュートです。
筆者も高校時代にスランプに陥った事があり、縮こまったシュートしか打てなくなり飛距離が全く出なくなった経験があります。
現代のシュート理論では筋力がなくてもシュートの飛距離を伸ばす事が可能と言われています。
スランプでシュートが緊張する、届かないなどの悩みをお持ちの方は以下のリンクから最新のシュート理論を確認してみて下さい。
↓↓
>>【バスケ】女子でもワンハンドが世界基準?3Pシュートの飛距離を伸ばす理論とは?
有名選手の”スランプ”エピソード
最後に、NBA選手などトップアスリートがスランプ・クラムジーに陥った時の克服エピソードをまとめました。
情報元になっているサイトのリンクも載せてあります。
参考になる点がたくさんありますので気になる方はチェックしてみて下さい。
カイリー・アービング
アービングは開幕からしばらく、3ポイントシュートが安定しなかった。最初の5試合の平均成功率は、わずか24.8パーセント。ここ数年、4割近くのショットを成功させていたアービングにとっては明らかに物足りない数字だった。
しかし、11月9日(現地時間8日)のトロント・ラプターズ戦で成功率42.9パーセントをマークすると、続く11日(同10日)のロサンゼルス・クリッパーズ戦では9本試投のうち5本を沈め、成功率55.6パーセントを記録。スランプに陥ることなく、わずか数試合で立て直してしまうアービングの修正力には、思わず脱帽してしまう。
アーク外からのショット改善について問われたアービングは、父と偉大なレジェンドからの教えを思い出し、繊細なポイントに着目したという。
「とにかく、右肘を尖らせること。数日前に父と話しましたが、父はいつも僕に対して右肘を尖らせておくように口酸っぱく言い聞かせてきました。それはコービー(・ブライアント)も僕によく言ってくれたことで、念押しされましたね。そして、ゆっくり時間をかけて、しっかりと踏み込むことも大切です」
「バランスが取れていないときがありました。ファンは見逃してしまいがちな小さなところですが、バスケットボールをよく理解している人や、僕のプレーを評価してくれる人は、若干リズムが狂っていたように見えたでしょう。ガイドハンドの位置が少し高かったり、左右にずれていたこともあります」
また、マーベリックスの背番号11は、シューターはショットが決まるか否かに問わず、自身を信頼することが重要だと続けた。
「このリーグで偉大なシューターになるためには、自信がすべてであり、そのすべては費やした努力と時間に比例します。僕は一貫性を保っています。良いモチベーションで準備し、チームメートが僕を見つけ続けてくれることを信じ、そのときが訪れたらシュートを決めるだけです」
ショットスランプへの対処…カイリー・アービングが思い出したコービーと父のアドバイスとは?より引用
カイリー選手はあまりにも修正能力が高く、本文中では「スランプにすらならなかった」と記載されていますが、一般人であればそのままスランプに陥るようなエピソードだと思い紹介しました。
父、コービーにアドバイスを受ける→1人で悩まない。
とにかく右肘を尖らせる→集中するポイントを絞る
ドノバン・ミッチェル
開幕からパフォーマンスが安定せず、『2年目の壁』に直面していたジャズのドノバン・ミッチェルが、スランプ克服のきっかけを掴んだ。
10月24日にトヨタ・センターで行なわれたロケッツ戦で、38得点5リバウンド7アシストを記録し、100-89での勝利に貢献。
試合後ミッチェルは、今シーズン開幕から悩んでいたことを告白した。
「あまり眠れていなかった。ここ何試合かの不調は、自分で自分にプレッシャーをかけていたようなところがあった」と語り始めたミッチェルは、「今日は、オープンなチームメートを探すことだけを考えて試合に臨んだ。
昨シーズンのプレーオフでは考え過ぎてしまって、正しいプレーができないことがあった。でも今日は、試合序盤に相手のプレーを的確に読めて、少し楽になった。いつも自分にプレッシャーをかけていた。昨シーズンの開幕もそうだったけれど、パーフェクトになろうとしていた。でも、それは不可能だから」と、続けた。
スランプの原因になった重圧は、周囲の期待から生まれたものではなく、自分が作り出したものだった。
ロケッツ戦では、何かが吹っ切れたようにアタックし、キャリアトップ3の得点をマーク。
オフから磨きをかけてきたパスでも納得のいくプレーができたが、ミッチェルはパフォーマンスを安定させる必要があると考えている。
スランプを克服したドノバン・ミッチェル「パーフェクトになろうとしていた」より
パーフェクトになろうとしていた→上手く行かない事は割り切る
ジョエル・エンビート
今季も9試合終了時点でチームトップの平均20.4得点を記録している一方、フィールドゴール成功率は昨季の51.3%から41.2%に大幅ダウン。
ミドルレンジのシュート成功率も49.1%→37.8%と落ちている。
相棒シモンズの不在、オフィシャルボールがスポルティング製からウィルソン製へ変更されたことなど、様々な要因が考えられるが、エンビードはスター選手らしく、しっかりと自身にベクトルを向けている。
「俺は常に言い訳を探しているわけじゃないけど、ボールが(これまでと)違うのはたしかだ。まだ完全にフィットしているわけではない。ただ、これもプロセス。毎日ハードに練習して、そこでシュートを決める。昨シーズン、俺はリーグ最高のミドルレンジジャンパーだったから、心配せずともいつか調子は戻るだろう」
チームの指揮を執るドック・リバースHC(ヘッドコーチ)も、「ジョエルは素晴らしい選手。心配するつもりはない」とエースに信頼を寄せている。
ジョエル・エンビードはシュートスランプ脱出へポジティブ志向「俺はリーグ最高のミドルレンジジャンパー」より
俺はリーグ最高のミドルレンジジャンパーだったから、心配せずともいつか調子は戻るだろう→自分の強みを思い出し自信をもつ
“クラムジー”に苦しんだサッカー選手
現在は日本代表に名を連ねる清武弘嗣選手(ニュルンベルク)や高橋秀人選手(FC東京)もインタビューなどでクラムジーに悩まされた時期があったことを語っています。
清武選手は中学1、2年生時にオスグッドに苦しみました。その後、大分U-15で、当時大分の育成アドバイザーだったU-17日本代表の吉武博文監督の指導を受け、これを克服したそうです。
高橋選手はクラムジーによって以前のスピードを失ってしまったそうです。しかし、それをきっかけにボランチとして活路を見出し、天職を見つけたといいます。
ある日突然、思い通りにプレー出来なくなる「クラムジー」とは?その理解と対策より
オスグットを克服→身体のコンディションを整える
以前のスピードを失ってしまった→新たな発見のきっかけに
まとめ
一時的とは言え、不調(プラトー、クラムジー、スランプ)を迎えた選手は本気で悩みます。
特に初めて迎える子供にとって、苦しみは一潮でしょう。
そんな時期に親が出来る事はとにかく子供に寄り添って気持ちを理解してあげることです。
心が折れなければ必ず不調を脱出して大きく成長します。
そんな姿をあせらず、ゆっくり見守ってあげる事が大切だと思います。
コメント