バスケットで足首が硬いと膝の怪我リスクが上がる?原因と改善法を紹介
ジャンプ、ダッシュの多いバスケットボール選手にとって、膝の痛みは常につきまとう深刻な問題です。
成長期にはオスグッド、中高生は前十字靭帯損傷。
これらの怪我を予防するために
・膝周りのストレッチ
・膝を守るために大腿四頭筋の強化
・練習後には欠かさずに膝のアイシング
しかし、どれだけ気を付けてケアをしても、膝の痛みを抱えて病院を訪れる方は後を絶ちません。
筆者は理学療法士として10年以上整形外科クリニックに勤務し、そんな悩みを抱えた選手と出会ってきました。
意外な事に、「膝」の怪我が必ず膝周囲の筋肉に問題があるとは限りません。
身体は全てつながっているため、膝以外の関節に異常があり、膝の痛みを誘発している事が少なくありません。
膝の痛みと関連しやすい関節が「足首」です。
近年の、バスケット選手やバレー選手を対象した近年の研究で、
足首の柔軟性が低いと着地時の膝への負担が大きくなり、怪我のリスクが上がる事が分かりました。
つまり、足首の動きを改善する事で、膝の怪我のリスクを減らせる可能性があります。
本記事では、研究結果の要約を紹介するとともに、
・足首柔軟性アップの方法
・足首の硬さをセルフチェックする方法
・自宅でも簡単に使えるおすすめケア道具
をご紹介します。
「頑張って膝のケアをしているのにプレーすると膝が痛くなる・・」
「膝が内側に入る癖が治らない・」
「踵をつけてしゃがめた事がない」
こんな悩みのある方は、本記事を読み進めて今すぐ膝を守るための“足首ケア”を始めましょう。
足関節の硬さが膝の怪我につながる事を示した研究
はじめに、足首の硬さが膝の怪我と関わりがある事を示した研究をご紹介します。
内容が専門的で細かい情報が多いため、要約の部分を中心に紹介します。
(※専門的な用語や難しい表現は簡単な言い回しにしています。)
原文を確認したい方は以下のリンクから確認して下さい。
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The Effect of Different Degrees of Ankle Dorsiflexion Restriction on the Biomechanics of the Lower Extremity in Stop-Jumping
(ストップ・ジャンピング動作における足首背屈制限の程度の違いが下肢のバイオメカニクスに与える影響)
目的
バスケットボールやバレーボールのような激しいスポーツでは、ジャンプして止まる動き(ストップジャンプ)において、足首がとても大切な役割を果たします。
しかし、足首を上に曲げる動き(背屈)が硬くなると、この動作中の膝や股関節の動き方が変わり、怪我のリスクが高まる可能性があります。
この研究では、わざと足首の動きを制限してストップジャンプを行い、膝や股関節、筋肉の働きにどんな変化が起こるのかを調べました。

方法
18名の参加者が、
・床への着地
・10°の角度がついたくさび板への着地
・20°の角度がついたくさび板への着地

の3パターンでストップジャンプを行いました。
右足の動きを細かく計測し、コンピュータで筋肉や関節の動きを解析しました。
結果
足関節の制限角度が増加すると
・膝の外旋角度
・膝伸展角速度
・股関節伸展角度と角速度
が有意に増加した(p<0.001およびp=0.001)。
つまり、足首の動きを制限すると、
・膝に必要のない捻りが加わる
・膝や股関節がより大きく速く動く
・膝まわりの筋肉が必要以上に強く働く
・ジャンプの着地初期(最初の3〜8%の時間)では、膝のお皿の裏側にかかる圧力が増える
などの変化がみられた。
結論
足首の動きが硬くなると、体はバランスを取るために膝まわりの筋肉を余分に使います。
その結果として膝への負担が増えます。
これは、足関節背屈角度が制限されることで、身体バランスを十分に調整できず、膝関節がバランス維持のために代償的に筋活動を高める適応反応を示した可能性がある。
筆者の考察
「足首が硬いと良くない、しゃがみ込みが出来ないと良くない。」
感覚的には理解していても、「なぜ良くないのか?」まで答えられる方は非常に少数派だと思います。
その答えは、
①足首が硬いと、膝(下腿)が外旋しやすくなる。
⇒膝の大怪我として有名な前十字靭帯損傷のリスクが高まる。
②足首が硬いと、ジャンプ初期の膝の皿への圧迫が増加する。
⇒ジャンパー膝、タナ障害と言われる障害が増加
③足首が硬いと、膝股関節の速い動きが必要となり使用される筋肉量が増える
⇒オスグット、膝蓋腱炎、肉離れなどのリスクが増加する。
だと言えます。
読者の皆さんの足首はどうでしょうか?柔軟な足首をしているでしょうか?
正確に関節の可動域を測定するためには理学療法士などの専門家に確認してもらう必要がありますが、ご自分で簡易的にチェックする方法もあります。
以降では、
・セルフチェックの方法
・足首が硬い場合のセルフケア
・プロも使用するケア道具
についてお伝えします。
セルフチェックの方法
母趾-壁距離測定
- 壁に向かって立ち、母趾を壁に向ける。
- 踵をつけたまま膝を壁に近づけ、膝が壁についた時の母趾と壁の距離を測る。
- 正常はだいたい 10cm前後。
- 左右差 2cm 以上は足首の硬さを疑う。
しゃがみ込みテスト
- 両腕を胸の前で組み、両足を肩幅にしてしゃがみ込む。
- かかとが浮かずにしゃがめるか、膝が内外にぶれないかを観察。
- 背屈制限があると、かかとが浮く・体幹が前に倒れる・膝が内側に入る。
足首だけでなく股関節・体幹の柔軟性にも影響されるので「スクリーニング」として有用です。
※母趾壁距離が10cm以上あるのにしゃがみ込みテストが出来ない場合
①母趾壁距離が正しく計測出来ていない(つま先を外に向けている、踵が浮いているなど)
②足首以外に可動域制限がある(膝・股関節、体幹)
事が考えられます。足首以外の可動域制限も怪我につながる事があるため、改善するようにしましょう。
足首の柔軟性を改善するセルフケアの方法
上記のテストで足首の硬さがあった選手は改善するためのケアが必要です。
一般的に理解されている「足首の硬さ」とは、専門用語でいうと「背屈」という動きになります。

背屈の動きが硬くなる原因はいくつかあるため、それぞれ分けて紹介します。
下腿三頭筋(ふくらはぎの筋肉)が硬くなっている
下腿三頭筋とは、ふくらはぎの筋肉を指し、下図のように「腓腹筋」と「ヒラメ筋」を合わせて下腿三頭筋と呼びます。

下腿三頭筋は「アキレス腱」と連結し、アキレス腱は踵の骨に付着します。
下腿三頭筋が疲労やケア不足で硬くなるとアキレス腱は踵の骨を上方に引っ張り上げるようになります。
つまり、「背屈」の動きを邪魔するようになります。
下腿三頭筋の硬さを解消するには、入念なストレッチが有効です。
ストレッチボードを使用する事により、立っているだけで簡単に下腿三頭筋のストレッチを行う事が出来ます。
「毎日のケアは時間がかかるしめんどくさい・・・」
そんな方でもストレッチボードなら簡単。
テレビ・動画を見ながらボードに乗っているだけでストレッチが完了してしまいます。
慣れてきたらゲームしながらでも出来る方がいるくらい簡単です。
購入はAmazon・楽天で出来ますので、簡単なケアから始めたい方はチェックしてみて下さい。
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内側の筋肉が癒着している
背屈の動きを制限する原因は下腿三頭筋以外にも存在します。
特に重要な筋肉は
・後脛骨筋
・長母趾屈筋
・長趾屈筋
の3つです。

イラストのようにふくらはぎ~足部にかけて付着する長い筋肉で下腿三頭筋の奥に存在します。
下腿三頭筋は伸長性が低下(筋肉が硬くなる)する事が問題になりますが、この3筋は「癒着」が問題になる事が多く、ストレッチよりも、癒着を改善する手技である「筋膜リリース」が有効な事が多いです。
筋膜リリースの本格的な手技は熟練を要しますが、マッサージガンを使用すると比較的簡便に実施が可能です。
特に、筋肉が急カーブするポイントや筋が密集する点に癒着が起こりやすいため、以下の青丸の点を狙う事をおすすめします。

上手く筋膜リリースを行えると、実施直後に足が軽くなる事も珍しくありません。
マッサージガンを購入し、毎日のケアとして実施するとケア後の翌朝は足の軽さを実感できると思います。
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また、
「そんなに細かい所まで気にしてケアするのは大変・・・」
「マッサージガンは高価で購入はちょっと・・」
そんな方へおすすめしたいのは、マッサージガンと同様、筋膜リリースを実施できるグリッドフォームローラーです。
グリッドフォームローラーは筋膜リリースをするために開発された商品です。
ふくらはぎに当てて転がすだけで、ある程度の筋膜リリース効果を実感出来ます。
ふくらはぎ以外の部分にも使用でき、1つで全身のケアを出来る優れものです。
足がむくんでいる
よくある事として軽視されがちですが、足のむくみが可動域制限の原因になる場合があります。
足のむくみを改善するためには、ふくらはぎの筋肉をよくもみほぐし、血流をよくする事が大切です。
医療用ではありませんが、「ゴリラのひとつかみ」は巻いてスイッチを入れるだけで心地良いマッサージをしてくれると評判の商品です。
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また、むくみを改善する事は可動域を改善するだけでなく、疲労除去にもつながります。
選手だけでなく、練習のお当番や試合の手伝いで足がパンパンに張ってしまった保護者の方の足にも使用出来ます。
強い刺激がお好みの方は、さらに強く揉んでくれる商品もありますので是非チェクしてみて下さい。
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まとめ
ジャンプや着地の動作では、足首の柔軟性が膝の負担を大きく左右します。
足首が硬いと衝撃を吸収できず、その分の負担が膝に集中してしまい、膝の痛みや怪我のリスクが高まることが研究でも明らかになっています。
本記事でご紹介した
- セルフチェック方法(母趾壁距離、しゃがみ込みテスト)
- 柔軟性アップのセルフケア(ふくらはぎストレッチ、筋膜リリース、むくみ改善)
を習慣にすることで、足首の柔らかさを保ち、膝の怪我を防ぐことにつながります。
バスケット選手を悩ませる大怪我である「膝前十字靭帯損傷」は今回紹介した、膝外旋の動きにより受傷リスクが増大します。
前十字靭帯を損傷してしまうと、手術跡8〜12ヶ月と長期間の競技休止を余儀なくされます。
プレーできる期間の限られた学生さんにとってはものすごく長い期間です。
「前十字靭帯損傷を防ぐ=膝のトレーニング」だけではなく、足首のケアも大切な予防の第一歩です。
本記事を参考に今日から少しずつ取り入れてみてはいかがでしょうか?
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