走れないのは練習不足?炭水化物補給で変わるバスケのパフォーマンス

毎日のように練習を頑張っているのに、試合になると——

「後半になると足が止まってしまう」
「ここぞという場面で集中力が切れる」

そんな経験はありませんか?
実はそれ、練習不足ではなく“エネルギー不足”が原因かもしれません。

今回紹介する Williams & Rollo(2015) のレビュー論文では、サッカーやバスケットボールのようにストップ&ゴーを繰り返す競技で、
試合前・試合中・試合後にどんな食事や補給をすればパフォーマンスを維持できるのか が徹底的に検証されています。

「試合前に食べるべきものは?」
「ドリンクは何を選べばいい?」
「試合後の回復はどうすればいい?」

部活に打ち込む子どもをサポートしたい保護者の方も、
自分のパフォーマンスを伸ばしたい選手本人も、この記事を読めば、明日から実践できる“勝つためのエネルギー補給戦略” が分かります。

目次

炭水化物の摂取によりパフォーマンス向上する事を示した論文

今回紹介するのは、Williams & Rollo(2015) によるレビュー論文です。

筆者がなるべくわかりやすく要約した内容をまとめましたが、全文を確認したい方は以下のリンクから
↓↓
Carbohydrate Nutrition and Team Sport Performance


この論文は、

・試合でのパフォーマンス
・持久力テストであるLoughborough Intermittent Shuttle Test(LIST)

の結果が栄養摂取によってどう変わるかを過去の実験をもとに結果をまとめたレビュー論文です。

LIST20mの距離を往復(シャトルラン形式)を用いいたテストでパートAとBに分かれ、パートBの結果を最終結果とします。

LISTの詳しい説明を確認したい方は以下をクリックすると見れます。

↓↓

LISTの詳しい説明を確認するにはここをクリック

まずパートAで試合のような疲労感を作ります。

次にパートBのテストでどれだけ長く走れるかを計測します。

バスケットやサッカーのようにストップ&ゴーの動きが多いスポーツの持久力テストに有用です。

今回紹介するレビュー論文では、実際の試合や、この持久力テストの結果が「どんな栄養を摂取するか?」で変わるかどうかを検証しています。

  • 運動前に何を食べれば良いか?(高GI・低GIの違い)
  • 運動中にどんな栄養補給が効果的か?(スポーツドリンクは飲むべきかどうか?)
  • 運動後にどう回復すれば良いか?(炭水化物やタンパク質の組み合わせ)

という3つのタイミングごとの最適な栄養戦略を整理しています。

つまり、本記事を読めば、試合前・試合中・試合後の食事や補給の正解は何かを知ることができます。

以下から論文の内容をお伝えします。

専門用語や難しい言い回しもあるため、筆者の考察から読んでも理解できるようにしています。
時間のない方は筆者の考察まで読み飛ばしても大丈夫です。

運動前に必要な栄養

実験①:Balsomらは、複数回のサイクリングスプリントにおいて「炭水化物ローディング(糖質を多く摂取して筋グリコーゲンを高めること)」がパフォーマンスに良い影響を与えることを示しました。

その後、この研究を拡張し、6人のサッカー選手を対象に、4対4の90分間の模擬試合において炭水化物ローディングの効果を検討しました。

試合の48時間前に、選手たちはシャトルランテストを行って筋グリコーゲンを低下させ、その後の食事を「高炭水化物食(エネルギーの65%が炭水化物)」と「低炭水化物食(30%)」に分けて比較しました。

その結果、試合前の筋グリコーゲン量は高炭水化物食の方が28%多く、試合中の高強度ランニングは30%多く行えました

ただし、テクニカルスキルのパフォーマンス(パスやドリブルなど)には差がみられませんでした。

実験②:一般的に「試合の約3時間前に、消化しやすい炭水化物を多く含む食事をとるべき」と推奨されます。

しかし、その際の炭水化物の種類(GI:グリセミック指数=血糖上昇の速さ)は必ずしも考慮されていません。

  • 高GI食(HGI)
    体重1kgあたり2.5gの炭水化物を含む高GI食を試合3時間前に摂ると、筋グリコーゲンは約11〜15%増加します。これは、消化吸収が速いため血糖と肝臓への取り込みが早く進むからです。
  • 低GI食(LGI)
    エネルギー量をHGI食と同等にしても、低GI食では筋グリコーゲンの増加は観察されません。これは、食物繊維が多く消化吸収が遅いため、血中ブドウ糖が筋肉に届くまで時間がかかるためと考えられます。その結果、運動中は脂肪利用が増え、グリコーゲン消費が抑えられました(いわゆる「グリコーゲンスパリング効果」)。

トレッドミルでの持久走テストでは、HGI食よりLGI食の方が「疲労困憊までの時間」が長くなることが示されました。

実験③:Afmanらは「レイアップシュート」を含むバスケットボール特有の技能テストを行いました。

選手は運動45分前にオレンジジュース(75gスクロース)またはプラセボを摂取。

結果、第1クォーター終了時に低血糖を起こし、シュート精度とスプリント速度が低下しました。

ただし後半のパフォーマンスには影響はありませんでした。

→大量の糖を「運動前に一度に摂取」する方法は低血糖リスクがあり、推奨されません

<実際の食事量の問題>

同じ炭水化物量を摂る場合、低GI食は高GI食に比べて「食物繊維が多く、食事量が多くなる」傾向があります。

結果として、満腹感が早く訪れてしまい、選手が必要量の炭水化物を食べきれないリスクがあります。

十分な糖質補給ができない場合、試合中のエネルギー不足につながる可能性があるのです。

運動中に必要な栄養

持久系運動において「炭水化物-電解質(CHO-E)飲料」を摂取するとパフォーマンスが改善することはよく知られていますが、間欠的な運動についての研究は比較的少ないです。


実験④:Nicholasらは、LISTテストの休憩中に、CHO-E飲料またはプラセボを摂取させました。

その結果、75分間の運動後、疲労困憊までのランニング時間がプラセボ条件より33%長くなりました。

Davisらも6%CHO-E飲料を使い、間欠的シャトルランで持久力が32%向上することを確認しました。


実験⑤:Davisらはさらに、バスケットボールに近いプロトコル(15分×4クォーター、ハーフタイム20分)を実施しました。

選手は運動前および運動中に6%CHO-E飲料またはプラセボを摂取。

結果:

  • 疲労困憊までのランニング時間は37%延長
  • 最後のクォーターでのスプリント速度低下が抑制
  • CNS機能(ストループ課題、気分プロフィール)や運動スキル(ジャンプ・ホップステップ)も改善

同じ方法を大規模な被験者群で繰り返した研究でも、スプリント速度の維持・運動技能・気分改善が確認されました。

実験⑥:Phillipsらは、濃度による違いを調べました。13歳前後の選手に2%・6%・10%のCHO-Eを比較させました。

  • 6%で持久力が最も高い(+34%)
  • 10%では逆にパフォーマンスが落ちる傾向
  • スプリント速度は濃度による差なし

高すぎる糖濃度(10%)は胃排出遅延や不快感を招き、逆効果になり得ます。


実験⑦:Foskettらは、サッカー選手に炭水化物ローディング(筋グリコーゲン50%増加)をさせた状態で再びLISTを実施。
結果:CHO-Eを摂取した方が運動継続時間が27分長い(158分 vs 131分)
→すでに筋グリコーゲンが十分あっても、CHO-E摂取は有効。

脳へのグルコース供給を維持することで「中枢性疲労」を遅らせる可能性があります。


運動後に必要な栄養

運動直後に炭水化物を摂取すると、筋グリコーゲンの再合成速度が速くなることが知られています。

しかし、チームスポーツにおいて重要なのは「その戦略が翌日のパフォーマンス回復に役立つかどうか」です。


実験⑧:Nicholasらは、選手にLIST(75分+疲労困憊までのシャトルラン)を行わせ、22時間後に再テストしました。

  • 高炭水化物回復食(9 g/kg体重/日):前日のパフォーマンスを再現できた
  • 通常の炭水化物摂取(5 g/kg体重/日)+同エネルギー量のタンパク質補足:パフォーマンス再現できず。

→ 翌日に試合や練習がある場合、十分な炭水化物摂取が必須であることが示されました。


同じエネルギー量・栄養素比率で「高GI食」と「低GI食」を比較したところ、回復後のパフォーマンスには差がなかったと報告されています。
→低GI食の利点(脂肪動員増加)は主に低強度持久運動に影響するため、高強度の繰り返し運動には大きな違いを生まないと考えられます。


「炭水化物にタンパク質を加えると、インスリン分泌が増え、グリコーゲン再合成が加速するのでは?」という仮説があります。

  • 一部の研究では、CHO+タンパク質で再合成が速まると報告されたが、インスリン濃度には差がなかった。
  • 最近の研究では、十分な量の炭水化物(約1.2 g/kg/時)を摂れば、それ単独で最大の再合成速度が得られ、CHO+タンパク質を上回る。
  • エリートサッカー選手を対象にした研究でも、48時間の食事介入でCHO+ホエイプロテイン強化群通常食群の間に筋グリコーゲン回復の差はなかった。

→ ただし、CHO+タンパク質摂取は筋タンパク質合成(回復・リカバリー)には有効とされています。


研究内容のまとめと筆者の考察

論文の内容をまとめると

運動前:

・高GI食は運動直前のエネルギー源供給には有利

・低GI食は持久的な運動では良いが、短時間・高強度運動への即効性は限定的。

・大量の糖を「直前にまとめて摂る」のは低血糖を招くリスクあり。

・実際の現場では、選手が必要量を食べられるかどうか(食事の量・消化吸収のしやすさ)が非常に重要。

運動中:

・運動中に6〜7%の炭水化物-電解質飲料を定期的に摂ると、持久力・スプリント維持・認知機能に有利。

運動後:

・翌日のパフォーマンス回復には 炭水化物摂取量(9 g/kg/日程度)が重要。

・高GI/低GIの違いは回復にはあまり影響しない。

・炭水化物+タンパク質はグリコーゲン回復を増やさないが、筋修復・筋肥大にはメリットがある。

以下では筆者の考えを加えて、さらに実践しやすい内容を考えていきます。

試合前の食事はこの食品を摂取!

試合当日の朝ごはんは中〜高GI食品を多めに摂取する事が重要。
以下に、それぞれの代表的な食品をまとめます。

🔴 高GI食品(血糖値が上がりやすい)

  • 主食類:食パン、フランスパン、コーンフレーク、精白米、もち
  • 野菜類:にんじん、スイートコーン、じゃがいも(茹で・ベイクド・マッシュ)
  • 果物類:レーズン

🟡 中GI食品(やや血糖値が上がりやすい)

  • 主食類:うどん、パスタ、ロールパン、クロワッサン
  • 野菜類:かぼちゃ、とうもろこし(茹で)、焼きサツマイモ、グリーンピース
  • 果物類:スイカ、ぶどう、オレンジ、パイナップル、バナナ、キウイ、メロン

🟢 低GI食品(血糖値が上がりにくい)

  • 主食類:玄米、五穀米、そば、全粒粉パン、ライ麦パン、オールブラン
  • 野菜類:上記以外の多くの野菜
  • 果物類:りんご、グレープフルーツ、洋梨、さくらんぼ、桃、プラム

中〜高GI食品をたっぷり使用した朝ごはんメニューは以下のようなイメージ。
(あまり美味しそうではありませんね・・・。)

試合中の水分補給は”ポカリスエット”がおすすめ

試合中の栄養補給は炭水化物と電解質を含んだCHO-Eを摂取する事がポイントでした。

簡単に考えると、スポーツ飲料がこれにあたりますが、スポーツ飲料も種類は様々あります。

今回の論文で、持久力向上効果が認められたCHO-Eの成分と同等品がどの製品になるかを調べました。

結果は以下の表の通り

種類炭水化物(糖質)濃度電解質(Na⁺量)特徴試合での活用
CHO-E(基準値)6〜8%Na⁺ 20–30 mmol/L(約460–690mg/L)最も吸収効率が良い。エネルギー+水分補給に最適。研究で用いられる標準モデル
ポカリスエット約6%Na⁺ 約490mg/L日本の定番、CHO-Eにかなり近い組成。試合中・練習中に最適
アクエリアス約4%Na⁺ 約400mg/L糖質控えめでさっぱり。軽めの練習、暑さ対策
ゲータレード(日本版)約6%Na⁺ 約450mg/L世界的定番、日本でも入手可能。高強度運動中に有効
OS-1(経口補水液)約2.5%Na⁺ 約1150mg/L電解質が非常に多い。糖質は少なめ。熱中症対策・体調不良時
アミノバリュー約4%Na⁺ 約400mg/L+BCAA疲労軽減を狙ったアミノ酸入り。長時間運動や試合後の回復補助
VAAM約4%Na⁺ 約400mg/L+アミノ酸脂肪燃焼や疲労対策をうたう。持久系競技や練習時に活用可

論文で述べらていたCHO-Eに最も近いのは超有名商品のポカリスエットと、海外では定番のゲータレードのようです。

競技中のパフォーマンス維持・向上を狙うのであればこの2つが最適かもしれません。

そして、入手のしやすさを考えるとポカリスエットがベストかもしれません。

あらかじめ使用する事が決まっているドリンクは、ネット購入がおすすめです。

スーパーで1本ずつ買うより、宅配の手軽さ+お得感を考えると、ネットでの購入は間違いなく賢い選択です。

Amazon、楽天でも購入可能ですので、試合の日に「ドリンクがない!!」と慌てないように準備しておきましょう。

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また、筆者が子供の頃は、そのまま飲むと濃すぎるから・・と、薄める事を推奨された記憶がありますが、論文の内容から考えるとそのまま飲む方がパフォーマンス向上は期待できそうです。

次の日も試合なら炭水化物(9 g/kg体重/日)で回復を

筆者は身体作りのプロ(理学療法士)として、今までは運動・トレーニング後は炭水化物+タンパク質の摂取をおすすめしてきました。

もちろん、トレーニングで筋肉をつけるためには、正しい考え方だと思います。が、論文でも示されていたように、炭水化物単体でもを量をしっかり摂取する事で翌日のパフォーマンスが向上する事が示されました。

翌日も試合があるのであれば、炭水化物の摂取を意識して行いましょう。

論文で示されていた、(9 g/kg体重/日)の量を、体重45kgの選手で具体的に考えてみます。

9g×45kg=405gの炭水化物量が必要。この量を1日で摂取するイメージは以下の通り。

🍚 朝食(ご飯+鮭+副菜)

  • 白ごはん(150g)… 約55g
  • 味噌汁(じゃがいも入り)… 約15g
  • かぼちゃ煮物(70g)… 約13g
  • ぶどう(70g)… 約12g
  • コーンフレーク+ヨーグルト… 約30g
  • その他(卵焼き・漬物・サラダ)… 約5g
    合計 約130g

🍱 昼食(弁当:スポーツ弁当)

  • 白ごはん(200g)… 約74g
  • 豚肉炒め(タレ)… 約3g
  • にんじん… 約4g
  • なす… 約4g
  • ブロッコリー… 約1g
    合計 約85g

🥢 夕食(酢豚定食+唐揚げ+ご飯)

  • 白ごはん(150g)… 約55g
  • 味噌汁+漬物… 約4g
  • 酢豚風の野菜・あん… 約25〜30g
  • 唐揚げ(2個)… 約5g
  • サラダ… 約3g
    合計 約95〜100g

3食に加えて、2試合で1.5リットルのポカリスエットを摂取。
🥤 ポカリスエット(1.5L)
1500ml → 約93g

<合計>

  • 朝食:約130g
  • 弁当:約85g
  • 夕食:約100g
  • ポカリスエット1.5L:約93g

合計 約408g

これで高炭水化物食の基準である(9 g/kg体重/日)を45kgの子はクリアしました。

いかがでしょうか?

ほとんどの方の感想は

「朝は食欲なくて1口しか食べない・・・」

「試合後は全く食欲がなくて食べない・・・」

「夕食なら結構食べるけど、こんなに用意してあげれないな・・・」

「うちの子はこんなに食べられない!!!!」

ではないでしょうか?

バスケットのような激しいスポーツを行う上ではたくさんのエネルギーが必要です。

なんとかしてエネルギーを確保しないと試合終盤まで元気に動き続けることはできません。

どうしても食べられない子は定番ですが、エネルギーゼリーを試合前・後や食後に摂取する事がおすすめです。
(筆者が知り限りコスパ◎のゼリーを以下のリンクに載せます。)

↓↓

また、食事前におすすはできませんが、カステラ、どら焼き、大福など、子供が好んで食べる高炭水化物のおやつを準備するのも一つの手だと思います。

今回の炭水化物摂取量は、あくまでも翌日もパフォーマンスを維持する必要がある場合を想定しています。

身体を大きくしたい、怪我で動けていないなどの事情がある場合は炭水化物量を減らし、タンパク質量を増やす事が適切な場合もある事を忘れないでください。

まとめ

  • 試合前:高GI炭水化物で備える
  • 試合中:CHO-Eドリンクで持久力up(ポカリスエットがおすすめ)
  • 試合後:炭水化物量をしっかり確保し、身体を回復
  • 1日の炭水化物量は翌日も試合があるのであれば(9 g/kg体重/日)を目標に

これだけの食事を準備する事は、手間も費用かかりとても大変です。

しかし、これらを実践することで、バスケットのような激しいスポーツでも、選手は最後まで走り抜く力を維持できます。

今回はパフォーマンス維持に必要な炭水化物量に着目しましたが、筆者が別に作成した記事では、消化・吸収のスピードを考慮してどの時間にどれくらい食べるのか?を具体的にまとめた記事もあります。

さらに深く、食事について理解したい方はぜひこちらも参考にして下さい。
↓↓
>>【バスケ】具体的なスケジュールも紹介 試合当日の大切な食事”勝負めし”


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