バスケットボールは様々な戦略があり、チームごとに大きく特徴が異なります。
そして、チームをまとめるコーチには様々なタイプが存在します。
コーチとの関係で以下のような事を思った・トラブルになった事はないでしょうか?
・感情的に怒る、指導が一方的で怖い
・他者への接し方が雑に感じる
・勝利至上主義。練習があまりにも過酷
筆者はミニバスコーチ兼、ミニバス少年団保護者ですが、上記のような問題は山ほど耳に入ってきます。
こんな問題を抱えた時、小学生のお子さん1人だけで解決するのは困難です。
この記事では、コーチとの関係に問題を抱えた時、保護者がどんな事を考えて対応するべきかを現場で活動するコーチ目線でお伝えします。
以下でよく起こるコーチとのトラブルをご紹介し、
①コーチがどんな事を考えているか?
②保護者が考える事
③おすすめの対応策
の流れでお伝えしていきます。
感情的に怒る、指導が一方的で怖い
最も多いのがこの悩みではないでしょうか?
もちろんバスケットを指導するにあたり、「叱る」事が必要な場面もあります。
しかし、
・人格を否定するような言葉(才能ない、頭が悪い、弱虫、etc・・・・・)
・不必要な大声
これは絶対に必要ありません。
コーチがどんな事を考えているか?
怒る・怒鳴る系のコーチの方はもともと声が大きな方が多いです。
筆者の知っているコーチの方でこんな事を発言しているのを聞いた事があります。
「やっぱり強く言えば子供達は言うことを聞くよねー」
子供達にだけでなく、普段の生活や仕事の場面でも声が大きい人の意見が通ってしまう。
そんな経験はないでしょうか?
コーチも声が大きい事で、子供達が言う事を聞いてくれる経験をしているかもしれません。
「自分の話を聞いてもらいたい。」
「コーチとしての存在感を発揮したい。」
と考えている方が多いように思います。
また、そのコーチ自身は気づいていないかも知れませんが、言葉での指導・説明力がない方には「怒る」事でしか指導できない方もいます。
プロ野球選手として東京読売ジャイアンツやメジャーリーグでも活躍した、桑田真澄氏は自身のブログの中で、怒鳴り散らす指導者に対し、こんな事をおっしゃっていました。
以下、引用です。
日本中,何百というチームを見てきたけど,
子供達を怒鳴り散らしている指導者ばかり。
怒鳴らないと理解してもらえないほど,私には指導力がないんですと,
周りに言っているようなもんだよね。
そんなことも,わからないのかね?
恥ずかしいというか,あまりにもひどすぎるよね。
そりゃぁ,叱らなければいけない時もあるよ。
でも,試合中,練習中,最初から最後まで,怒鳴ることないよね。
その情熱は,素晴らしいと思うんだけど,方向が間違っているよね。
それだけ情熱があるのなら,もっと勉強して知識を身につけるべきだよね。「桑田真澄公式ブログ.2009年3月10日 気が付く」より引用
怒鳴るコーチの真意は
・大きな声で自分の言うことを聞いてほしい
・怒鳴る・厳しくする事が指導であると勘違いしている
・知識が不足し何を言えば良いかがわからない
だと思います。
保護者が考える事
まずは、子供の意見をじっくり聞きましょう。
最初に話を聞く段階では、あくまでもフラットに。
「最近、練習はどう? 新チームになったけど雰囲気はどう?」
「役割が増えてコーチにはどんな事を指導されるの?」
こんな具合にあくまでもさりげなく聞いてみると良いかも知れません。
「コーチには最近よく怒られるけど、出来る技も増えたし、試合もたくさん出れるし楽しいよ!」
こんな風に、怒られているがその他の部分でやりがいを感じている・楽しいという言葉が出てくるのならもう少し様子をみて良いかもしれません。
・「コーチが怖くて萎縮してしまう」などのはっきりとした意思表示
・保護者から見て明らかにコーチに対しての様子がおかしい
などがあれば、対応が必要かもしれません。
おすすめの対応策
対応が必要だと判断した場合はコーチと直接話をしてみる事をおすすめします。
ただ、
「うちの子がコーチの事を怖がっているので優しくして下さい。」
「指導が厳しすぎます。それでは誰もついてきませんよ?」
など、正直な思いを伝えてもほとんどの場合はうまくいかないでしょう。
そのため、以下のような話し方がおすすめ。
「いつも熱心にご指導頂きありがとうございます。○○はコーチにもっとドリブルをしっかりつけるよう指導を受けて、一生懸命家でも練習しています。」
「コーチが先日教えてくれたボックスアウトの仕方。すごく難しかったみたいで、まだまだうまく出来ないって泣いてました。でもコーチに期待されてるから一生懸命頑張るって言ってました。あの子はまだまだ時間がかかるかも知れませが、温かく見守ってくれると嬉しいです。」
こんな内容がベストだと筆者は思います。
ポイントは、コーチが指導→子供が指導を受けて変わったor変わろうと努力をしている。
ことを伝えることにあります。
怒鳴る系のコーチは強そうに見えて、実は自分の指導・人間性に自身がないため、怒る事で人をコントロールする術をとっている場合があります。
そんな不安を払拭できるような事を伝えてあげると、
「○○は俺の言葉をしっかり受け取ってくれているから、これ以上怒らなくて良いか・・」
となる事が期待できます。
※もちろん嘘はダメです。
他者への接し方が雑に感じる
コーチは競技の指導力だけでなく、コーチ自身の人間性がすごく大事です。
ここで挙げた”他者”とは、
・選手
・保護者
・他のコーチ
・他チームの関係者
・審判などの大会運営に関わるスタッフ
などを指しています。
子供は大人の振る舞いを本当によく見ているものです。
いくらバスケットの技術指導が上手でチームが強くなろうと、人として信用を失うような言動・行動を目にした子供達はコーチへの信頼を失います。
保護者の方々にとってはこの問題が一番悩ましいと言う方もいるのではないでしょうか?
コーチがどんな事を考えているか?
少年団のコーチはほとんどの場合、ボランティアで行っているため
「自分の時間を削ってやってあげている」
という意識の方がいます。
また、コーチ歴が長い、大会で結果を残した実績があるなどもマイナスに働く事があります。
・自分はチームのトップ
・自分の言うことは聞いて当たり前
・勝つ事で結果を残しているのだから、自分の言うことは聞くべき
・この地区のミニバスの事は自分が一番よくわかっている
こんな原因で周りへの接し方が雑になってしまう事が考えられます。
保護者が考える事
20代前半のような若いコーチであれば話は別ですが、コーチの人間性を保護者の意見によって変化させる事はかなり難しいと思います。
この問題は根本から解決するように目指すのではなく、不利益を最小限にする事を目指す方が良いかもしれません。
おすすめの対応策
この問題に関しては、コーチへの不満を直接ぶつける事はあまりおすすめできません。
プライドを持ち、一生懸命なコーチほど、
「そんな事言われる筋合いはない。」
「ボランティアでやっているのにそんな事まで言われたくない。」
と耳を傾けてくれない事がほとんどでしょう。
おすすめの方法は、コーチが信頼を置く人物に相談する事です。
具体的にはアシスタントコーチや父母の代表さんになる場合が多いと思います。
相談内容としては、
①事実確認
②子供、保護者の思っている事を伝える
がおすすめです。
①の例としては
「今日、コーチに何度も無視をされた。」と子供から報告があったとします。
子供のコミュニケーションをないがしろにするのは絶対によくありません。
しかし、これが絶対ににコーチに問題があるとは言い切れないため、事実確認をアシスタントコーチに確認します。
私:「○○がコーチに何度も無視されたと言っていて少し気になってしまったのですが、アシスタントコーチからみてそのような事は見受けられますか?」
アシスタントコーチ:「それはおそらく無視している訳ではなくて、聞こえていないのかも知れませんね。コーチは60代に入って最近耳が少し遠くて・・なんて事を話ていました。私からも○○と少し話してみますね。」
といった具合に、コーチにも仕方ない事情がある。誤解してしまっていることがあります。
それを確認してみる事で正しい情報を教えてくれたり、解決策を提案してもらえるかもしれません。
もし、それでも納得いく回答が得られない。思っていた通りの事実でモヤモヤする場合は②を実行しましょう。
私:「○○がシュートのフォームを見てほしいと言っても、お前はシュートなんてまだ打てないからドリブルだけやってろ!と言われてしまったみたいで落ち込んでいました・・・コーチが子供達に冷たいように感じるのですが、いかがでしょうか?」
アシスタントコーチ:「・・・確かに、私から見ても少しきつい対応をする事はあるかも知れませんね。悪い人ではないんですが・・。」
私:「悪い人ではないと思うし、バスケットを一生懸命教えてくれるコーチ陣にはすごく感謝しています。ただ、◯○は少し打たれ弱いところがあって、そういった経験で強くなってほしいと思っていますが、その前に心が折れないかが心配で・・・。」
アシスタントコーチ:「わかりました。それでは、コーチと子供達のコミュニケーションをしっかり見守って、もしそう言う事があれば私が話を聞くようにしますね!」
意見を伝える事で、どんな風にサポートすると良いかがアシスタントコーチも明確になります。
全ての要望に応えてもらう事は不可能ですが、黙って我慢するよりもお互い良い方向に進めるかも知れません。
勝利至上主義。練習があまりにも過酷
筆者が子供達と接していて、いつも子供の成長スピードには驚かされます。
漫画・スラムダンクの主人公である桜木花道が、素人からあっという間に全国で通用するレベルに成長してしまった。
小学生はそれに近いような成長スピードで進んでいくように感じます。
それもそのはず、6歳〜12歳の年齢にあたる小学生は、運動のゴールデンエイジ期と呼ばれ、運動能力が著しく発達する時期です。
引用元:SCAMMON R. E.(1930)The measurement of the body in childhood.
コーチがどんな事を考えているか?
どんどん成長する子供達を見ていると、
「もっと走ればもっと速くなる。」
「もっとシュートの練習を教えれば試合でもっと点数を取れる。」
「もっと練習をすれば全国大会に届くかもしれない。」
「もっと・・・・」
とついつい、大人が夢中になってしまいます。
結果、勝利を追い求めて練習が過酷になっていきます。
選手を潰すために練習をさせるコーチはいません。
一生懸命指導する事で子供達を上手くして、勝ってほしい。
そんな願いから練習が過酷になっていきます。
保護者が考える事
勝利によって得られる達成感や高揚感は大事です。
しかし、成長途中である小学生に無理は禁物です。
・練習のために睡眠時間を削る
・練習が過酷でご飯が喉を通らない
・バスケットに集中して友達と遊ぶ時間、家族とゆっくり過ごす時間は0
・疲れて授業中は居眠り・・・
これは、今後の人間としての今後の成長の妨げになってしまうため避けるべきでしょう。
過酷な練習の継続により最も懸念されるのは、
①伸長が伸びなくなる
②怪我をする
の2点です。
伸長が高い事はスポーツ選手にとって大事な要素の一つ。
特にバスケットボールで重要である事は説明する必要はありません。
過酷な練習の繰り返しにより、伸長の伸びが阻害される可能性がある事は知っておいた方が良いでしょう。
過酷な練習が伸長の伸びを阻害する要因は2つ。
・睡眠時間の不足
・エネルギー、栄養不足
以下は、伸長の伸ばし方を解説された書籍
「すごい伸長の伸ばし方」 著者:田邊 雄
を参考に書きます。
よく、「睡眠は毎日8時間とりましょう。」
と聞くと思いますが、小学生はこれでは足りません。
以下は米国国立睡眠財団が推奨する年代別の推奨睡眠時間です。
出所:米国国立睡眠財団ホームページ
これによると小学生に推奨される睡眠時間は9〜11時間です。
小学生でも練習時間を確保するため、夜練として21時まで練習を行っているチームがあります。
その時間まで練習を行うと、急いで就寝準備をしてもおそらくベッドに入るのは23時頃になると思います。
そこから必要な睡眠として9時間とったとすると、起床時間は8時になります。
ほとんどの小学生は学校に向かって出発する時間になってしまいます。
次に②の栄養の話です。
伸長を伸ばすために必要な栄養素はいくつかありますが、最も重要なのはタンパク質の摂取量です。
タンパク質は様々な食品に含まれていますが、質の良い高タンパク食と質の良くない低タンパク食があります。
・高タンパク食(肉、魚、卵、乳製品)
・低タンパク食(小麦製品、パン、パスタ)
低タンパク食に対して高タンパク食を多く摂取する国は伸長が高いと言う事がわかっているそうです。
オランダ 184cm (2.65倍)
アメリカ 179cm (1.65倍)
アルメニア 172cm (0.45倍)
※()内の数字は低タンパク食:高タンパク食の比率
オランダやアメリカのように高身長を目指すためには低タンパク食よりも高タンパク食を多く摂る必要がある事を覚えておいてください。
また、「高タンパク食と低タンパク食の割合が大事」と聞くと、
そもそもの主食量を減らせば良いのかな?と考える方がいると思います。
それはいけません。
低タンパク食である主食は炭水化物で、動くためのエネルギーになります。
バスケットは激しいスポーツで多くのエネルギーを必要とします。
主食を減らす事で、エネルギー不足が起きると体の中でどんな変化が起こるかというと、
”筋肉(タンパク質)を分解してエネルギーを作り出す”
事が起こります。
こうなると、せっかく練習して鍛えた筋肉が落ちてしまったり、タンパク質量が不足して伸長の伸びに悪影響を及ぼします。
また、身体を作るタンパク質が不足すると怪我をするリスクも当然増えます。
おすすめの対応策
練習の頻度・量はコーチに進言しても、変えてもらう事は難しい場合が多いため、自身で出来る対策をしていくことをおすすめします。
もし、夜練として活動する事をやめる事ができない場合、伸長を伸ばすためには可能な限り早く就寝できるように保護者がサポートする必要があります。
・宿題は夜練前に済ませて、翌日の準備も終わらせる
・ご飯は夜練前に済ませて、練習後の軽食を移動の車でとる
・帰ったらお風呂にすぐ入れるように準備をする
・スムーズに入眠出来るように、練習後のスマホ使用は禁止する
などが具体的な対策になるでしょう。
適切な睡眠時間を確保するためにはこれぐらいの徹底が必要になります。
栄養に関しては、正確にカロリー・栄養成分計算を毎日行うのは難しいです。
大雑把に低タンパク食の2倍近い高タンパク食をとる。
と覚えておけばオランダやアメリカの数字に近づきます。
例)1皿分のご飯に対して、高タンパク食を2皿分食べる(ハンバーグを1皿、納豆の乗った冷奴を1皿)
こう考えると、かなりの量を食べる必要があります。
過酷な練習を行った後は、食欲が落ちる子が多くいます。
必要なタンパク質量が不足する事で、伸長が伸びなくなる可能性があります。
また、練習頻度が増える事で、練習の準備やお手伝い、送迎など保護者の負担も増えます。
必然的に食事の準備にかけられる時間も減ってしいます。
低タンパク食がほとんどを占めるようなメニューが毎日続いていないかはチェックしましょう。
※完璧なメニューを毎日準備するのは現実的ではありません。お惣菜や外食などを利用する、今日は無理!と諦める日もあって良いと筆者は思います。
また、エネルギー量が足りているかをチェックする最も簡単な方法は、体重を毎日決まった時間に測る事です。
運動を始めたばかりで元々肥満傾向の子供には当てはまりませんが、伸長が日々伸びて、筋肉も増えていく子供達は体重も一緒に増えていくはずです。
“伸長は伸びているのに、体重は減っている”
これが危険サインです。
エネルギーが足りず、身体の筋肉を分解してエネルギーを作っている状態かもしれません。
毎日、体重を測ってチェックしましょう。
また、怪我に関しては医師の診断を受ける事が一番です。
怪我に対する考え方や理解度はコーチによって様々で、休むことにネガティブな考えを持っている方もいます。
「足首が痛いから今日は休みます」
「お医者さんより、足首の外側の靭帯を損傷していて、無理をするとグラグラの足首になる可能性があると言われました。2週間は安静が必要と言われたため練習を休みます。」
コーチに伝えて納得してもらいやすいのは断然後者のはずです。
“たかが捻挫、成長痛”と思わず、適切な診断を受けて下さい。
まとめ
・感情的に怒る、指導が一方的で怖い
・他者への接し方が雑に感じる
・勝利至上主義。練習があまりにも過酷な内容
・感情的に怒るコーチは自尊心を満たしてあげる
・行動、言動に不審感を感じる場合は事実確認と第三者に相談
・過酷な練習に対しては自身で出来る対策と病院受診。
上記がポイントです。
大切なお子さんの大事な時期である小学生。
この頃の親の悩みは本当に尽きないものです。
おすすめの対応方法をご紹介しましたが、これらの問題は複雑で必ず解決できる方法はありません。
少年団活動がお子さんにとって有意義な時間になる事を願っています。
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