「たくさん練習しているのに思うように上達しない…」
バスケットをしている我が子の様子を見て、そんな事を感じたことはありませんか?
一生懸命練習に取り組む姿を毎日見ているだけに、結果が出ないでイライラする姿を見るのは親も辛いものです。
本記事はそんな思いを抱えている親御さんの手助けになるかもしれません。
バスケットボールは走る・跳ぶ・投げる多様な動きを同時にこなすスポーツ。
練習で筋力・体力を鍛え、技術練習をこなしてもそれだけでは活躍する事は出来ません。
体を使う以外にも、「判断する事」を求められるため、体だけでなく、頭もフルに使わなければなりません。
最新の研究では、バスケットボールを続けることで「脳」そのものが発達していることが示されました。
しかも、ただ“脳が良くなる”のではなく、プレーに直結する領域が育っていたそうです。
この記事では、エリート選手の脳を解析した研究をもとに、「バスケを続けると脳がどう育つのか」をわかりやすく解説します。
科学的な内容も出てきますが、専門知識がなくても大丈夫。
筆者が要約した内容を読んでいただければ、「練習」や「遊び」がどれほど脳に刺激を与えているかが理解できるはずです。
また、バスケット脳を育てるための具体的なトレーニング・遊び道具を紹介します。
「一生懸命練習しているのにどうしてこんなに試合で活躍出来ないのだろう・・・・」
そんな想いを抱える選手を一人でも減らせるように、最後まで内容を確認してみて下さい。
バスケットボール選手の脳がどのように変化していくかを示した研究
初めに、エリートバスケット選手の脳がどのように変化していたかを調べた研究を紹介します。
原文で確認したい方は以下のリンクから
※専門的な内容になるので、「筆者の考察」から読んで頂く事をおすすめします。
研究の背景
エリートアスリートにおいては、さまざまなスポーツに関連して脳の構造や機能に可塑的な変化が報告されている。
興味深いことに、関与する脳領域はスポーツの種類によって異なる。
我々の研究室では、手動セグメンテーション法を用いた解析において、バスケットボール選手と対照群との間に小脳全体の体積差は認められなかった。
しかし、詳細な解析では、エリートバスケットボール選手において線条体および小脳虫部VI–VII葉の体積増加が認められた。
本研究では、自動MRI解析ツールを用いて、バスケットボール選手の大脳皮質における可塑的変化を明らかにすることを目的とした。
方法
19名の男子大学バスケットボール選手と、年齢・性別・身長をマッチさせた20名の対照群の脳MRIデータを収集した。
大脳皮質の変化を明らかにするため、ボクセルベース形態測定法(VBM)およびサーフェスベース形態測定法(SBM)といった自動MRI解析技術を用いた。
結果
VBM解析では、
・両側の中心前回(precentral gyrus)
・中心傍小葉(paracentral lobule)の灰白質および白質
・右前上側頭回の灰白質
上記の体積増加が確認された。
SBM解析では、両側の中心周囲領域(pericentral gyri)の皮質厚が左優位に増加していた。
フラクタル次元解析では、両側中心前回、左皮質下回、右後帯状回の領域において面積の増加が認められた。
これらの結果は、一次運動野だけでなく帯状回もバスケットボールにおいて重要な役割を果たすことを示唆している。
結論
エリートバスケットボール選手では、両側中心前回、中心周囲領域、中心傍小葉、さらに右上側頭回における可塑的変化が観察された。
特に、両側中心前回におけるフラクタル複雑性の顕著な増加、および右後帯状回と左皮質下回における弱い増加が認められた。
本研究で示された可塑的領域は、バスケットボール競技に必要な能力と関連する機能的神経解剖に結びついていた。
筆者の考察

研究で述べられていた内容をわかりやすくまとめると、エリートバスケット選手は
- 運動をつかさどる脳(中心前回、中心傍小葉)が発達
→ ジャンプ、ダッシュ、方向転換など下半身の動きを正確にコントロール - 空間認知をつかさどる脳(上側頭回)が発達
→ 仲間や相手の位置を瞬時に把握、パスやドライブの判断が速くなる - 脳の複雑さ(フラクタル構造)が増加
→ 情報処理が効率化し、試合中の素早い決断につながる
つまり、バスケットが上手な選手は「体を動かす脳」と「空間を読む脳」の両方が発達している事がわかりました。エリートバスケットボール選手の脳を調べると、運動や空間認知に関わる領域が発達していることがわかりました。
ここで気になるのは、
脳が発達していたからバスケが上手くなったのか? それともバスケを続けたから脳が発達したのか?
――まるで“鶏が先か卵が先か”の問題です。

ここで答えを出すことは出来ませんが、脳を鍛えることがバスケの上達につながる可能性がある。
と筆者は研究内容を読んで思いました。
運動と同時に判断力・集中力・空間把握力を刺激するトレーニングや遊びを取り入れれば、バスケのスキルアップに役立つかもしれません。
以下で、普段の練習にさらに刺激を加えるような道具や、家族・友達同士で楽しくできるボードゲームなどを紹介します。
バスケット脳を鍛えるには?
研究が示した脳の発達は、「特定のスキル練習」だけでなく、遊びの中でも刺激できる可能性があります。
研究内容にも上がっていた、鍛えるポイントは以下の3点。
①中心前回”と“中心傍小葉
②上側頭回
③フラクタル構造
それぞれについて深掘りしていきます。
運動をつかさどる脳”中心前回”と”中心傍小葉“
中心前回(precentral gyrus)は体の随意運動を司る「動きの司令塔」。
中心傍小葉(paracentral lobule)は特に 下肢(太もも・足・つま先) の動きをコントロールしています。
つまり、素早い下半身の動きや複雑な足の操作を伴う遊びが、この2つの領域を刺激します。
ただ走るのではなく、より素早く、より複雑にする事で、脳が強化される事が期待できます。
具体例は以下の通り
1. 鬼ごっこ(しっぽ取りなども可)
- 急な方向転換、ダッシュ、ストップを繰り返す
→ 下肢運動の制御と、全身を一瞬で動かす脳の指令系統を鍛える
2. ジャンプ系遊び(ケンケンパ、なわとび)
- 片足ジャンプやリズムジャンプで足を細かくコントロール
→ 中心傍小葉が担当する下肢の精密運動が活性化

3. 反応ゲーム(色・音に反応して動く)
- 例:「赤と言われたら前にジャンプ、青なら横にステップ」
→ 運動野+判断力を同時に刺激できる

4. 障害物走(アジリティコース)
- コーンやラダーを置いてジグザグ走・クロスステップ
→ 走る+止まる+また走るの繰り返しで下半身運動野を総合的に刺激

5.リアクションボールキャッチ
- 不規則に跳ねるリアクションボールに素早く反応してキャッチする。
→ 遊び感覚で実施でき、遊び感覚で下半身運動野を刺激

つまり「脳を発達させる遊び」を取り入れることで、練習量が少なくても試合中に正しく判断する能力が伸びるかもしれません。
空間認知をつかさどる脳”上側頭回”
上側頭回の主な役割は以下の通りです。
- 音の処理:音の高さ・強さ・方向を聞き分ける
- 言語理解:言葉の意味や文脈を理解する(特に左脳側)
- 空間認知:相手や物の位置関係を素早く把握する
上側頭回は音や言語を処理する遊びを取り入れる事で発達を促す事が期待できます。
特に、空間認知能力は試合で活躍するために必須な能力と言っても過言ではありません。
意識して鍛えるためには楽しみながら長く続けられる遊びを通して鍛える事がおすすめです。
空間認知能力をはじめ、上側頭回を鍛えるのにおすすめのゲームは以下の通り。
気になるゲームがあればAmazon、楽天でも気軽に購入できるので内容を確認してみて下さい。
1.音あてゲーム どろぼうを捕まえろ
- 音の高さ・方向・強さを聞き分け、音から状況をイメージする力を鍛える。
→ 側頭回の音処理を刺激

2.カタカナーシ
- 文字や言葉を組み合わせて意味を理解する過程で、言語理解力を活性化。
→ 上側頭回の言語理解を刺激
2.カタカナーシ
- 文字や言葉を組み合わせて意味を理解する過程で、言語理解力を活性化。
→ 上側頭回の言語理解を刺激
2.カタカナーシ
- 文字や言葉を組み合わせて意味を理解する過程で、言語理解力を活性化。
→ 上側頭回の言語理解を刺激

2.カタカナーシ
- 文字や言葉を組み合わせて意味を理解する過程で、言語理解力を活性化。
→ 上側頭回の言語理解を刺激

脳のシワ”フラクタル構造”
「脳のシワが多いと頭が良い」
なんて話を聞いた事がある方が多いと思いますが、このシワのことをフラクタル構造と呼ぶそうです。
バスケット選手に発達していたフラクタル構造を増加させるためには、
より複雑で多様な運動を取り入れる事が有効。
例)
・「走る・止まる・跳ぶ・方向転換・判断」の複合運動を伴う練習(ゲームが1番近い)
・「ドリブルしながらしりとり」
・「ラダーを踏みながら色や音に反応する」
・今まで練習した事のないスキルに取り組む(楽器の練習や言語学習などを含む)
複雑な運動を自宅で取り入れるには、以下のようなものがあると簡単に実施できます。


この道具を用いて、バランスを取るだけでも大変な状況を作ると、その他どんなに簡単な課題でもフラクタルを増やす運動に早変わりです。
例)
・ボードに乗りながら、投げられたボールをキャッチする。
・ボードに乗りながら、ジャンケンする。
・BOSUに乗りながら、足で数字を描く
などなど。
4. まとめ
- バスケを続けた人の脳は「運動」「空間認知」「情報処理」の領域が発達している
- これは高度なプレーを支える“脳の土台”
- その土台は「遊び」でも鍛えられる可能性がある
エリートバスケットボール選手の脳は、運動を指令する領域、仲間や相手を瞬時に把握する空間認知の領域、そして情報処理を効率化する脳の複雑さが発達していました。
これは偶然ではなく、バスケというスポーツが「体を動かす力」と「考える力」を同時に刺激し続けるからこそ生まれた変化です。
大切なのは、この“脳の成長”が特別なエリート選手だけのものではないということ。
子どもでも大人でも、練習や遊びの中で脳を刺激する工夫を取り入れれば、上達のスピードもきっと変わっていきます。
今日からの練習や日々の生活にちょっとした「脳を揺さぶる遊び」を加えてみてはいかがでしょうか?
楽しみながら脳を刺激する遊びを生活に取り入れることが、バスケ上達の近道になるかもしれません。
コメント