治らない”ももかん”の成れの果て
バスケットボールはコンタクトの多いスポーツのため、相手と接触して発生する打撲や筋挫傷などが多発します。
特に太もももを強く強打する事を”ももかん”と呼んだりします。
軽度のももかんであればプレー継続も可能な場合もあり、中等度以上の場合でも数日で症状が緩和していくことがほとんどです。
そのため、「良くある怪我」と軽視されがちです。
安静のみで問題ないケースもありますが、一点だけ気をつけなくてはいけない場合があります。
「受傷後、24〜48時間経過後、膝が曲がらない、腫れている。けど内出血はしていない。」
この状態に至った場合は要注意。
場合によっては外科的手術まで必要な場合もあります。
この記事を読めがそれが何故かがわかります。
・ももかん(以降は”筋挫傷”と表現します。)が発生した際の処置方法
・手術に至らないためにチェックするべきポイント。
筋挫傷とは?
相手の膝が大腿部に強くあたった場合のように、筋組織に直達外力が加わる事で筋組織の損傷が起こることを言います。
収縮中の筋肉が、その下の骨に押しつけられるように圧迫される事で筋肉に断裂と出血が生じます。
断裂が及ぶ範囲は様々です。
下の図はふくらはぎの筋肉の断面図です。
上図によって筋肉(ピンク)は筋膜に包まれ、それぞれの部屋に別れるように存在しています。
筋挫傷は出血が及ぶ範囲によって以下のように分かれます。
①筋表層断裂
筋肉の表層に断裂・出血(青く示した場所)が生じた状態です。
筋肉を包んでいる筋膜も損傷が及ぶと出血が体表から確認できるようになります。(内出血)
接触で起こる筋挫傷でも起こりますが、肉離れもこのパターンが多いです。
②筋内出血
筋肉の内部に断裂・出血が生じた状態です。筋膜に損傷がないため内出血は見られません。
③表層・筋内出血
断裂・出血範囲が広範で、①と②を合わせたような状態です。
④筋間・広範囲出血
断裂範囲がかなり広範で、③の状態にプラスして、筋肉と筋肉の間(緑で示した所)にも出血が及んだ状態です。
特に注意が必要な状態はどれ???
上述した①〜④で特に注意が必要なパターンはどれでしょうか??
ほとんどの方は④と答えますが、実は注意が必要なのは②の筋内出血です。
改めて筋内出血の状態を確認します。
筋肉を包み込む筋膜が損傷しない事で、筋内で発生した出血は血腫(血の塊)となり、筋肉の内圧が高まります。
詳しい説明は省きますが、この状態になると、周囲の組織から筋肉内に体液が侵入し、さらに圧は高まります。
この状態は48時間以上続き、明らかな圧痛や運動制限が見られるようになります。
筋肉内に出来た血腫は自然に吸収される可能性が低く、病院受診が必要です。
つまり、受傷後、24〜48時間経過後、膝が曲がらない、腫れている。けど内出血はしていない。
のであれば病院を受診しましょう。
筋内血腫を放っておくと・・・
筋内血腫は下記のように症状が変化していく可能性があります。
I.血腫ができるが固まっていない状態
受傷直後で、血腫が固まっていない状態であれば注射器で除去する事ができる可能性があります。
Ⅱ.骨化性筋炎となり、血栓溶解剤の治療が必要となる
状態がさらに悪化すると、後述する骨化性筋炎という状態になります。血栓溶解剤という血腫を溶かすための薬剤を用いた治療が必要になるかもしれません。血腫を除去するだけでも3週間以上は必要となります。
Ⅲ.骨化性筋炎がさらに悪化、外科的手術が必要
血栓溶解剤による治療効果が期待できない、又は医師によっては外科的手術の方が回復が早いと判断される場合があります。
この状態になると、上記よりも復帰には長い時間がかかる事が予測されます。
“ももかん”を放置すると発生”骨化性筋炎”
手術も必要になるかもしれない骨化性筋炎とは
「断裂した筋肉の炎症部位にカルシウムが沈着し、筋組織の中に骨が形成された状態」です。
受傷後、3〜4週間ほどでレントゲンでも見られるようになります。
この状態に陥ると強い痛みと著名な可動域制限が発生します。
バスケットボールで好発するのは”大腿部前面の筋挫傷”
バスケットボールでよく見られる受傷シーンは、ドライブの時です。
オフェンスがドライブし、ディフェンスをかわそうとした際に発生する事が多く見られます。
特にオフェンスとディフェンスがスピードのミスマッチになっており、ディフェンスがついていけず、
ブロッキングファールをした際、よく見られます。(ディフェンスの膝とオフェンスの大腿部前面が接触)
筋挫傷発生時の対応
受傷時に大事な事は、損傷した筋肉からの出血を最小限に留めることです。
広く一般に知られるRICE処置が有効です。
大腿部前面に発生した場合は、膝を曲げながらアイシングする事が必要です。
詳しい方法が解説された動画をご紹介します。
まとめ
打撲・筋挫傷はバスケットではよく起こる怪我です。
ただの打撲と思い放置していると長期間のスポーツ休止を余儀なくされるかもしれません。
「受傷後、24〜48時間経過後、膝が曲がらない、腫れている。けど内出血はしていない。」
場合は、病院を受診しましょう。
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